完璧主義で疲れているあなたへ|Apple、Amazonも実践する「適度主義」の成功法則

fクリップをきっちり並べる完璧主義者のビジネスパーソン

仕事で細部が気になってしまい、予定より残業が増える。まじめにやっているつもりなのに、なかなか効率が上がらない。完璧主義のせいで、少し疲れ気味の毎日。

資料作成では初稿からきれいに仕上げようとし、チームの仕事にも高い基準を求めがち。そんな完璧主義な働き方が、徐々に仕事の速度や人間関係に影響を与えています。

意外と多いのが、こうした完璧主義による小さな行き詰まり。でも、どうすれば手際よく仕事を進められるのか、その方法がつかめないまま、日々の業務を続けているビジネスパーソンは少なくありません。

本記事では、窮屈な完璧主義から一歩進んで、「適度主義」という効率的な働き方を身につける方法をご紹介します。すでに多くのビジネスパーソンが取り入れ、成果を上げている実践的なアプローチです。

完璧主義が引き起こすリスク

どんなときでも手を抜かない完璧主義の人は、その集中力や責任感が評価される一方で、多くのリスクがあるのも事実です。

完璧主義があると、以下のような悩みを抱えてしまうと心理カウンセラーの大塚統子氏は指摘します。*1

  • ・少しでもできないと自分を責めてしまう。
  • ・きちんとしていない人に対して不満を感じやすい。
  • ・中途半端なところは人に見せられないので、弱音を吐けない。
  • ・完璧が無理なら、もう取り組まないと極端になってしまう。

こうした状態が続けば、人間関係がギクシャクしたり、他者に助けを求める機会を逃してプロジェクトが遅れたり、完璧にできないなら取り組まないという姿勢が、生産性を低下させたりしてしまいかねません。

精神的な負担も大きいので、メンタルヘルスにも悪影響が出てしまうのではないでしょうか。

パソコンの画面を凝視する完璧主義な印象のビジネスパーソン

完璧主義から「適度主義」へシフトするには

したがって、完璧主義すぎることは自分のためにも、周囲のためにも、自分が属する組織のためにも、あまりいいことがありません。このように完璧主義で疲れやすい働き方は、改善の余地があります。

そこでおすすめなのが80%の完成度を目指す「適度主義」です。たとえば「アイデア出しでは完璧を求めず、とりあえずかたちにする」「資料作成をする際は、まず大枠を完成させてしまう」といった具合です。

イギリスの公認臨床心理士である Jessamy Hibberd 氏も、常に100%を目指す完璧主義な人は、80%の力で取り組むことが重要だとしています。

特にここで知っていただきたいのは、Hibberd 氏がそう述べる理由です。同氏によれば、完璧主義者になりやすいタイプの人は、仕事を大切にして一生懸命働く人。そんな人が少しくらい力を抜いても、全体的な成果は損なわれないだろうというのです。多くの人が60%程度しか力を出していないことを考えると、80%でも十分高いレベルだと Hibberd 氏は言います。*2

そう聞くと、少し安心できるのではないでしょうか。

50−80−100ルールとは

完璧主義で疲れている人が、いきなり80%の完成度にするのはなかなか難しいものです。そこで完璧主義を、適度主義にシフトさせるのに効果的なのが「50-80-100 ルール」です。これは一般社団法人日本産業カウンセラー協会が紹介している手順で、適度主義を実践するためのステップとして、以下のように進めます。*3

    • ステップ1:「100%の出来を想定する」
      ⇒いつも完璧を目指す自分がやっているとおり。

    • ステップ2:「50%の出来を想定する」
      ⇒こだわりをそぎ落とし、最重要ポイントだけに絞ることで「本当に重要な部分」と「些末なこと」の区別がつきやすくなる。

  • ステップ3:「80%の出来を想定する」
    ⇒ステップ1と2をもとに再構成。それをゴールに定めて作業を進める。

何度か実践すると、「必須ではなかった部分」「時間と労力をかけた割に効果が低かった部分」が見えてきます。
この「削れる20%」を特定できるようになると、タスク全体を最初から「80%完成」でスタートできるようになります。

50−80−100ルール 実践例

ひとつ例を挙げてみましょう。

  • 【背景】
    ITエンジニアAさんは、要件定義書の作成で細部にこだわりすぎ、期限内に終わらないリスクに直面。

  • 【実践】
    100%の出来:すべてを網羅する完璧な要件定義書を想定 → 時間が足りない。

    50%の出来:最低限の要件のみをまとめる → シンプルすぎて不足感あり。

    80%の出来:重要な部分に絞りつつも、ひと手間のこだわりは残し、必要最小限の作業で仕上げる → 客観的に見て十分なクオリティと時間短縮を実現。

これにより時間短縮が可能となり、重要な要件に集中できるようになるはず。また、こうやって完璧主義のこだわりを整理し、効率的に成果を出すことができれば、自分の基準を見直すいいきっかけとなるでしょう。

最初のうちは「80%で終えるなんて不安だ」「周りにがっかりされるのでは」といった気持ちが出るかもしれません。しかし、実際にやってみると周囲から好意的な反応が得られることが多いと実感するはずです。

「50-80-100ルール」を実践し、快適な様子のビジネスパーソン

成功事例で見る、適度主義の実践例

適度主義は、数多くの成功した企業の開発現場でも実践されています。

たとえば革新的なデザインと卓越した技術で、iPhone や Mac などの世界的ヒット商品を生み出し続けるテクノロジー企業 Apple の例を挙げてみましょう。

Apple はまず製品をつくり、テストとレビューを行ない、その後デザインの改良を加え、また最初からやり直すサイクルを繰り返すといいます。*4

つまり、Apple の成功は、最初から完璧を目指すのではなく、試作品のテストと改良を繰り返す「適度主義」のアプローチによって実現されているのです。この手法により、無駄をそぎ落としながらも必要な改善を見極め、最終的に市場での高い評価を得る製品を生み出しているわけです。

また、世界最大級のオンラインショッピングサイトを運営する Amazon や、空き部屋を貸したい人と、借りたい人をマッチングさせる民泊プラットフォームの Airbnb も同様に、適度主義を実践して成功を収めました。

その際には、MVP(Minimum Viable Product)アプローチを活用しています。MVPとは、「最小限の機能を持つ初期バージョンのプロダクト」のことで、「製品やサービスを競合他社よりも早く迅速に市場投入し、ユーザーのフィードバックを迅速に収集すること」を目的としています。*5

たとえば Amazon も開発当初は「オズの魔法使い」型※と言われる MVP アプローチを採用していました *5(※高度な自動化システムが稼働しているように見せつつ、じつは注文が入るたびに手作業で発送していたという有名な話)。

また、Airbnb はサービス初期に「コンシェルジュ」型の MVP アプローチを取り入れていたといいます。ユーザーからは自動化されているように見えても、実際には背後でスタッフが手動で宿泊予約の仲介やコミュニケーションを行なっていたのです。*5

これらの企業は、初期段階で完璧を追求せず、「最小限の機能で市場の反応を確認し、ユーザーフィードバックを基にサービスを改善する」といった適度主義の手法を活用して、世界中が知るほどの成功を収めたと言えます。

つまり、最初から完璧を求めなくても、大きな成功を収められる可能性はあるわけです。

ですから、まずは目の前の仕事をかたちにして、完璧ではなくとも「とにかく達成できた」という、小さな成功体験を積み重ねてみてはいかがでしょう。他者はあなたほど完璧を求めないもの。その「完成」に感謝を伝えるかもしれません。

そうして完璧ではなくとも達成できた、喜ばれたと思い返すことができれば、いままで感じていたプレッシャーも軽減できるはず。そのなかで改善を繰り返し、ストレスも自己批判もない最善をつくりあげ、成功への架け橋にしてください。

***
自分のため、そして一緒に働くメンバーのためにも、適度主義でよりよいかたちを目指しましょう! 

【ライタープロフィール】
こばやしまほ

大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。

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