メンタルが強い人が “しないこと”。仕事のプレッシャーを手放す3つの習慣

楽しそうに仕事をしている女性

「この案件、本当に間に合うのかな……」

会議室を出たあと、また不安が胸をよぎる。昨日も終電近くまで残業したのに、プロジェクトの進捗は予定より遅れ気味。部下からの相談も増える一方で、上司からの期待にも応えなければならない。

仕事でのプレッシャーやストレスと向き合いながら、誰もが「もっとメンタルを強くしたい」と願うもの。しかし、じつは、メンタルの強さは生まれつきの性格ではなく、日々の習慣で培えるスキルなのです。

では、ストレスに強い人は何が違うのか? 彼らは「やらないこと」を決めています。今回は、メンタルの強い人が絶対にしない3つの行動をご紹介します。この記事を読めば、あなたも明日から余裕を持って仕事に取り組めるようになるはずです。 

1. ストレスに強い人は、「不安」を放っておかない

「明日の重要なミーティング、うまく話せるだろうか……」

過去の失敗が頭をよぎる。質問に詰まって沈黙したときの冷ややかな空気。的外れな回答をしてしまったときの役員の表情。また失敗するかも……と不安を抱えたまま、心が消耗し、ほかの仕事に身が入らない——こんな経験はありませんか? 

ストレスに強い人の特徴は、上記のような「不安」を放っておかないことです。

多少の不安は正常であり、むしろ役に立つと語るのは、『勉強脳』 (東洋経済新報社)の著者であり、ヴァージニア大学心理学教授のダニエル・T・ウィリンガム氏。同氏は「不安によって問題の存在に気づく」と述べます。*1

たしかに、「これでは、納期まで間に合わないかも……」と不安になるからこそ、私たちは業務の効率化を図ったり時間配分を見直したり、対処法を考えたりするものですよね。ただ、問題なのは「不安にエネルギーを費やすこと」です。

不安が「役に立つ」ものではなく「有害」になるのは、その環境に脅威がないかチェックすることに時間と精神的エネルギーを習慣的に費やすようになった場合です。*1

ウィリンガム氏の指摘は、プレッシャーで心が消耗してしまうのは、不安の対処で疲れるからとも言い換えられるでしょう。となれば、メンタルの強い人は不安を放置することなく、リスクヘッジに役立てている、と考えられます。

では、不安を有害にさせないためには? ウィリンガム氏は「目標にすべきは、不安を管理すること」だと答えます。*1 不安を放置するのではなく、不安になる場面でどう行動するのかあらかじめ計画することで、不安を有効活用することができます。

【不安を放置しないための3ステップ】

  1. 不安の具体化:漠然とした不安を、具体的な課題に分解します。
    Before
    「この重要なミーティング、うまく話せるだろうか……」
    After
    準備:資料の根拠が不十分、想定質問への回答準備不足
    発表:説明の論理性に自信がない、質疑応答が心配
    状況:キーパーソンが参加、決裁への影響大
  2. 対処計画の立案:課題ごとに、実行可能なアクションを設定します。
    準備段階
    ・データの最新化と出典確認
    ・想定質問リストの作成(10問以上)
    ・プレゼン構成の再確認
    発表前日まで
    ・チーム内でリハーサル
    ・キーパーソンの関心事を確認
    ・補足資料の用意
  3. 小さな実践から:すぐにできることから着手します
    ・前回の議事録を確認
    ・関連部署に事前確認
    ・資料の最終チェック

不安は警告サイン。放置するのではなく活かす方法を知れば、最強の味方になるはずです。

リラックスした様子で仕事をしている人

2. ストレスに強い人は、「空気」を読みすぎない

メンタルの強い人は何事にも動じなく見えます。それは、空気をあえて読まない姿勢でいるからです。

「好かれたい」「嫌われたくない」と空気を読んでまわりと合わせる「同調圧力」について、「疎外感に弱い人」からかかる、と指摘するのは精神科医の和田秀樹氏。免疫力が落ちてウィルスに感染するように、嫌われるのが怖いとなおいっそう、周囲と合わせなくてはと神経をすり減らしてしまう……という負の連鎖が起こるのです。*2

一方、メンタルの強い人は空気をあえて読みません。和田氏によれば、

じつは、「好かれよう」「嫌われたくない」と過剰に思わないというのは、同調圧力がかかりにくいということでもあります。*2

メンタルの強い人は「好かれなくてもいい」と思うからこそ、「空気を読まなければ」というプレッシャーに振り回されないのです。まわりを気にせず、変わり者でいられるのですね。

とはいえ、「空気を読まない」人は、「あの人は面倒だなあ」と煙たがられることも否定できません。和田氏も注意点としてなんでも反対意見を率直に言うのではなく、「自分が正しいとはかぎらない」と自戒を持つことが必要だと述べます。*2

具体的には、空気を破る前に「相手の意見も尊重」するのです。和田氏は「同意も否定もしない言い回し」を使うことをすすめています。*2 以下の会話例を見てみましょう。

チーム「この企画はターゲット層を広げられますが、予算は間に合わないですよね」

あなた「そうも考えられますね。ただ、予算をオーバーしても実行する価値はあると思います。予算に関しては再調整しましょうか」

「その可能性もある」「〇〇さんの考えも一理ある」「その見方もある」と、一度相手の意見を受け入れるクッションを挟んでみましょう。上手に「空気を読まない」ようにすれば、「自信のある人」と見られるはずです。

楽しそうに会話している従業員

3. ストレスに強い人は、「覚える」ことをしない

メンタルの強い人が疲れている姿は想像できません。ただ、それは疲れにくいのではなく、脳のリソースを使い切らないために「覚える」ことを最小限に留めているのです。

「覚えることをあきらめた」と述べるのは、市場が評価した経営者ランキング 第1位(東洋経済ONLINE 2019年)、株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長の木下勝寿氏。思い切った発言ですが、仕事を放棄したのではなく、代わりに「全案件をスマホにメモ化、アラート化」したと言います。*3

その理由は——

メモを取ることで安心して忘れることができ、脳の容量に空きをつくれたのだ。*3

つまり、覚えておくものは脳に頼らずメモに記入し、仕事に集中させるための余裕をもたせるのです。実際に木下氏は「空いた頭脳のリソースをすべて『思考する』ということに集中させる」ことをしているのだそうです。*3

実際、筆者も木下氏のやり方を参考に、必要以上に覚えないことを心がけました。もちろん、筆者の代わりに覚えるのは付箋です。

スマホのリマインダー機能を使うと通知が多くなるため、付箋を使います。

ポストイットにタスクを書き込んだ様子

  • A原稿を推敲段階まで仕上げる
  • B原稿を5割執筆する
    →担当さんに納期の相談(必要に応じて)
  • 構成案の修正 資料探し(他原稿をリサーチしながら)

上記のように書き出しました。ほかの雑務も別の付箋に書き込みます。

ほかの雑務も別の付箋に書き込んだ様子

  • 執筆のスケジュール見直し
  • カラーペンの補充
  • サイトない記事&SNSのチェック→分析
  • 書籍の注文

上記のように書き出しました。

リマインダーは使わないため、デスクの向かいの壁にかけたカレンダー下に貼りました。

カレンダー下に付箋を貼った様子

仕事でぼーっと考えごとをしているときに、視線を上に向けると付箋が目に入ります。原稿の仕上げに関しては覚えていましたが、「スケジュールの見直し」は忘れていたようです。すぐさまスケジュールを確認し、夕方前には……

終わったタスクを緑のマーカーで消した様子

半分ほどタスクが終わり、緑のマーカーで消しました。付箋で見れば、「午前中に〇割進んだ」と進捗状況もわかりますし、忘れがちな小さなタスクも一緒に見れます。頭のなかであれこれ考えながら仕事する必要もありません。実際「覚える」ことを諦めれば、「あれもこれもやらなければ」という不安も減りました。

ですから、頭のなかを空にするためには、一日のタスクを極力洗い出すことが大切だと言えるでしょう。また、移動の多い人はスマホのリマインダー機能を使い、通知で思い出すほうが効率的です。ぜひ、覚えるより「思考」に集中できる脳の状態にしてみてくださいね。

***
何事も動じず仕事をしている人は、もとから「メンタルが強い」と思われがち。しかし、それだけではなく、仕事に対する姿勢や考え方が違うのです。ぜひ、メンタルを保てる働き方に変えてみてください。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト