「やる気がなくても動ける人」になる方法。記憶と現実の “ギャップ” が自然と行動を導く!

星渉さん「記憶と現実とのギャップ」01

「やりたいことや、やらなければならないことがあるのに、なかなか『やる気』が出ない」人は多いもの。そのやる気を出す対象が、趣味など自分が好きなこととは違って、仕事や勉強であればなおさらかもしれません。どうすればやる気を出すことができるのでしょうか。

その問いに対して、ベストセラーになっている『神モチベーション 「やる気」しだいで人生は思い通り』(SBクリエイティブ)を上梓した星渉(ほし・わたる)さんは、意外なことにやる気があるかどうかは問題ではないと語ります。その言葉の真意を教えてもらいます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/塚原孝顕

「やる気」とその出し方には3つのタイプがある

私は、「やる気」、あるいはやる気の出し方には3つのタイプがあり、人によって異なるものだと考えています。その3つとは、ハイモチベーション」「アクションモチベーション」「ギャップモチベーション。ここで、みなさんのモチベーションタイプを診断するチャートを紹介します。

【モチベーションタイプ診断チャート】

モチベーションタイプ診断チャート

結果はどうだったでしょう? それぞれについて解説します。1つめのハイモチベーションは、多くの人にあてはまるタイプです。このタイプの人は、やる気になっているときは鼻息荒くまさにやる気満々という状態になります。

でも、このハイモチベーションには大きな落とし穴があります。世のなかには「上がったものは落ちる」という原理原則がありますが、もちろんそれはやる気にも当てはまります。つまり、ハイモチベーションによるやる気は長続きしないのです。そのため、仕事にせよなんにせよ、ハイモチベーションに頼っていては、なかなか成果がついてきません。

2つめのアクションモチベーションは、「まず行動することによって生まれるやる気」です。みなさんも、「人はやる気が出たから行動するのではなく、行動するからやる気が出る」「だからつべこべ言わずに動け」という話を聞いたことがあるのではないですか? じつは、このことは科学的に証明されています。行動することで、いわゆる「やる気物質」のドーパミンという神経伝達物質を分泌する、脳の扁桃体という部分が刺激されることがわかっているのです。

ところが、多くの人が感じるのは、「それはわかるけれど、やる気がないのに動けるなら苦労しないよ」と言うことでしょう。そのため、「正しいとわかっていることをできない自分は、駄目な人間ではないか……」と、新たな悩みを生むことになりかねません。

星渉さん「記憶と現実とのギャップ」03

 

行動を生むのは、「記憶と現実」のあいだにあるギャップ

そこで私がおすすめしたいのが、3つめのギャップモチベーションです。先の診断でハイモチベーションやアクションモチベーションになった人も、ぜひこのギャップモチベーションのタイプを目指しましょう。

その最大の特徴は、「やる気が出ていることを自分が感じていようがいまいが、動くことができる」ことです。

みなさんが終電に乗ろうとするとき、改札を通過してホームに向かおうとしていたら、終電の発車ベルが鳴ったとします。走らないと間に合いません。そのとき、「発車ベルが鳴っていて走らないと間に合わないから、いまから走るためのやる気を出そう」なんて思うかといったら、そうではないですよね? 「やる気を出そう」と考えるとか、やる気を感じるなんてこともなく、気づいたときには走っていると思います。

それはなぜなら、ギャップモチベーションは「やる気を出そう」と考えるのではなく、ある「ギャップ」を埋めようとすることで生まれるものだからです。そのために、私はこの名をつけました。

そのギャップとは、「記憶と現実」のあいだにあるギャップです。そして、この記憶には2種類あり、それぞれ「未来記憶」「過去記憶」というもの。先の終電の例は、未来記憶と現実とのギャップを埋めようとすることで生まれたやる気、あるいは行動です。

未来記憶という言葉に違和感を覚えた人もいるかもしれませんね。でも、未来に対してなんらかの予測をすると、その予測は脳に刻まれますから、その時点ですでに記憶だと言えるのです。終電の例で言えば、「この時間に駅へ行けば、終電に十分間に合うだろう」のような予測が、未来記憶となっています。

ところが、現実はどうか。改札を通過したときには、発車音が鳴っていた。未来記憶と現実のあいだにギャップが生まれました。そして、その人は自然にそのギャップを埋めようと、やる気など関係なく走る行動を始めるのです。

星渉さん「記憶と現実とのギャップ」04

ギャップに「強い感情」がともなうほど行動に結びつきやすい

ここに、ギャップモチベーションの最大のメリットがあります。つまり、やる気が出ていることを自分が感じていようがいまいが、もっと言えば、やる気なんてものがなかったとしても動くことができることです。

過去記憶についても同様です。過去にプレゼンがうまくいった記憶があるとします。そのときは、取引先の部長にプレゼンする前に、部長の部下である課長に根回しをしたことでうまくいったとしましょう。そして、また同じ部長にプレゼンをする場合、「課長に根回しをしたからうまくいった」という記憶が頭のなかに浮かんできます。

そのとき、「今回はまだ課長に根回しをしていない」という現実があったとしたらどうでしょう? 当然、記憶と現実のあいだにギャップを感じて、「このままじゃまずいかも……」という気持ちが湧いてきます。そうして、「今回も課長にきちんと根回しをしよう」とやる気、あるいは行動が生まれるわけです。

つまり、記憶と現実のギャップをしっかりと感じることこそが、自然にやる気や行動を導くためのポイントとなります。そして、そのときに「強い感情」をともなうほど、ギャップモチベーションは、より行動に結びつきやすくなります

先のプレゼンの例で言えば、「今回は課長に根回ししていないし、ちょっとまずいかもしれないな」とどこかのんびり構えている人と、「課長に根回ししておかないと、今回はプレゼンに失敗するぞ!」「そうなったら、上司から何を言われるかわかったものじゃない!」と危機感を覚えている人がいたとしたら、どちらが行動に結びつきやすいでしょうか? 答えは言うまでもなく後者です。

星渉さん「記憶と現実とのギャップ」05

ギャップにともなう4パターンの感情のうち、どれが行動に結びつくか

そうすると、「どうすれば強い感情をともなってギャップを感じられるのか」と思った人もいるでしょう。これについては、みなさんそれぞれが自分自身に対してテストをするしかありません。ただ、テストをするにあたって目安となるものがあります。ギャップにともなう感情には4つのパターンがあるのです。

それは、未来記憶とのギャップにもついい感情」「未来記憶とのギャップにもつ悪い感情」「過去記憶とのギャップにもついい感情」「過去記憶とのギャップにもつ悪い感情の4つです。それら4つを実際に感じてみてください。

たとえば「勉強してある資格をとったら、どんな成果を出すことができて、どんな評価を受けられるか」とポジティブな未来を想像してもつ感情は、「未来記憶とのギャップにもついい感情」です。

逆に、「この勉強をしておかないと、将来的にまずいことになるぞ」とネガティブな未来を想像してもつ感情は、「未来記憶とのギャップにもつ悪い感情」です。みなさんは、どちらのほうが行動に結びつきやすいと感じますか?

話が少しそれるようですが、よく「勉強しないといけないことはわかっているが、やる気が出なくて勉強できない」人がいます。私から言わせれば、そういう人はただ単に、「本当の意味で勉強しないといけないことがわかっていない」だけです。「勉強しておかないとまずい……」のような強い「未来記憶とのギャップにもつ悪い感情」があれば、自然と勉強をするはずだからです。

過去記憶についても同じように、「過去にこういうことをやってよかった」「だから今回もきちんとやろう」は「過去記憶とのギャップにもついい感情」ですし、「過去にこういうことをしたら嫌な思いをした」「今度はそうなりたくないから、同じことを繰り返さないようにしよう」は「過去記憶とのギャップにもつ悪い感情」から行動に結びつけるパターンです。

それら4パターンを自分に当てはめてテストしてみれば、一番行動に結びつきやすいパターンが見つかるはずです。そうなればしめたもの。自分に合ったパターンを活用することで、やる気を出そうと悩むことなどなく、あなたは動ける人になれます。

星渉さん「記憶と現実とのギャップ」06

【星渉さん ほかの記事はこちら】
思考は現実化するからこそ「無理だ」と思うなかれ。“使う言葉” を変えれば人生はうまくいく
負の感情を「消そうとする」のは間違い。やっぱり「紙に書き出す」が最強だった
「話を聞いてもらえず」「人を動かせない」人の残念すぎる特徴。“いつも否定ばかり” は圧倒的に損だ
傷つきやすく折れやすい “心の弱い人” が、今度こそ「強いメンタル」を手にする方法
「悩み」から自分を引き離して楽になるコツ。“これ” を紙に書き出すのが効果抜群だ
チャンスをものにする「行動力」は4つの習慣で高める。“心の回復力” なくして永遠に行動はできない
やる気に関係なく「理想の行動」をとる最大のコツ。なりたい自分を “設定” するだけでいい
「結果だけ」見て喜ぶのは二流の証。成長し続ける一流は「これ」を重視していた

【プロフィール】
星渉(ほし・わたる)
1983年5月13日生まれ、宮城県出身。作家(著書累計7冊43万部)、株式会社Rising Star代表取締役(https://usp-times.com)。大手企業で働いていたが、東日本大震災に岩手県で被災。生死を問われる経験を経て「もう自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決め、2011年に独立起業し、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学を学びはじめる。それが原点となり、個人の起業家を対象に「心を科学的に鍛える」を中心に置いた独自のビジネス手法を構築。「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」をコンセプトに活動し、わずか5年間で講演会、勉強会には7,200人以上が参加し、手がけたビジネスプロデュース事例、育成した起業家は623人にものぼる。ゼロの状態から起業する経営者の月収を、6カ月以内に最低100万円以上にする成功確率は91.3%を誇り、その再現性の高い、起業家のためのビジネスコンサルティング手法が各方面で話題となる。コンサルティングの申し込みは倍率92.1倍を記録。日本で数千人規模の講演会を実施し、シドニー、メルボルン、ニューヨークなどの海外で大規模なイベントを行い、グローバルに「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」ための活動をしている。『神モチベーション 「やる気」しだいで人生は思い通り』(SBクリエイティブ)、『神子育て』(朝日新聞出版)、『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)、『神トーーク』(KADOKAWA)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト